『ファンタジスタドール イヴ』を読みました。

ファンタジスタドール イヴ』を読みました。

これはアニメ『ファンタジスタドール』と
世界観を同じくする、前日譚的な
小説(ラノベではなく"小説")なのですが、
その内容がとてもアニメには似つかない怪作でした。

正直なところ、アニメを観ていない人にも
勧めて反応を伺いたい作品です。

もちろん、アニメを観ていた方が
ニヤリとできること請け合いではあります。
貸してくれてありがとう、うに氏。

ファンタジスタドールとしての『イヴ』

とある雑誌の編集者が川越の廃研究所で発見した
印刷物3枚と、薄汚れた電子媒体。

そのメモリー内のテキストファイルが、
作中世界におけるこの小説の位置付けです。
(研究所はアニメ2話あたりと終盤で登場してました)

……アニメ本編との直接的な接点は、このあたりだけですね。

カードやドールまわりの科学技術面の設定補強と、
その技術の発展を支えた偏執的にして人間的な男たちの
熱情に切り込んでいく、ちょっとカルマ値の高い作品です。

未来のイヴや人間失格へのオマージュも
多分に含まれているそうですが、
両作品を読んでいなかったので私はわかりませんでした。
後追いながら、読んでみたいなぁと思います。

メディアミックスだが、小説だ。

この作品、一般の文学作品のような趣があります。
大兄太子と遠智要。女性に絶望した二人が織り成す、
ちょっと闇の深いサイエンスフィクション小説です。

性的な欲求と理性の葛藤。
エロティシズムに密接に関わる内容でありながら
下卑たところのない、どこか真摯で品のある語り口。

およそ三章構成で、主人公の
大兄太子の成長に沿った独白が綴られていきます。
「第一の力」は幼少期、「第二の力」は小学校、
「第三の力」は大学以降のお話となっています。
(とはいえ文章量は第三の力が断トツなのでおよそ、としました)

それぞれの章に、大兄太子に大きな影響を及ぼす
原体験、ある種のトラウマとなる女性たちが現れます。
第一の力・第二の力を得た上での、大学における葛藤。
そして最後に手にする、第三の力。
「力」が何を指すかは、読み終えたとき、
なんとなく感じるものがあるかと思います。

あと、読み終えると、人生で一度は使ってみたくなるフレーズがあると思います。
「帰りたまえ。彼が触れる乳房が、
 こんな陳腐でありふれた、そこいら辺の、
 誰にでも手に入る乳房でいいはずがない」(一部抜粋)。
すごいセリフですよねぇ……本当にシビれました……

それは、乳房であった

上記のセリフは本当に一端でしかなく、
小説の内容はもっとすごいです。
葛藤の描き方に躊躇がなくて、徹底的で、あまりにリアル。

私は紙書籍を借りて読んだのですが、未来のイヴや人間失格を読んだあとに
またゆっくり読んでみたいので、自分でもKindle版を買いました。


終わりや終わり! 終了!!

書いた人: 久世うりう (kuzeuriu) お問い合わせ


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