本当にやっちゃいました。
仕事から戻ってきたら、タイトル等含めてもう一度更新かけます。
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君は言う。
私たちには、現在しかないのだと。
過去に揮発性があり、未来が可能性である以上、
どちらも不確かで信じるに足らないものなのだと、君は言っていた。
……ああ、確かに。
小さい頃の思い出なんて、今では意図して思い出すことも難しくなってきているし、
これから先どうなるのかなんて、些細な違いを含めれば、いくらでも考えつくことができる。
けれど。けれどね。
時間は連続している。今という一点を基点として、過去と未来がせめぎ合っている。
君にとっては存在するものだけが信じるに足るのだと、頑なに言うのなら。
ここにいる私たちの仲でさえ、いつかは信じるに足らないものになるのだと……君は言うのかな?
「いいかい、美樹。万物は、波なんだ」
静かなのに、よく通る声。
髪を後ろに結わえた彼女は、言った。
彼女は明朗快活で、よく笑う。
そしてときどき、今のようによくわからないことを言うのだった。
「時間もまた、振動によって構成されている。音や光と同じ。だからあたしたちが観測できるのは、あたしたちが立っている地点……『現在』に到達したものだけなんだ」
時間は、音や光と同じ。
そもそも音や光だって、私は理屈をよく理解していない。
すこしだけ想像してみたけれど、私にはとても理解できそうになかった。
「……むずかしいことは、わからないよ」
「そうだね。あたしにもわからない」
私が申し訳ない気持ちで口にすると、彼女もまた、そう言って笑うのだった。
ひとしきり笑うと、彼女は言った。
「やっぱり美樹は変わっているなぁ」
今の会話のどこにそんな要素があったのかわからなくて、すこしむっとする。
いわれのない中傷を受けている気分だった。
「君ほどじゃないよ」
心から、そう思う。
私が変わっているというのなら、彼女は比べものにならないくらいに、変わっている。
普通の人とは、違う。
「あはは、そうだね。ごめんごめん」
彼女は腹を立てることなく、自認する。
……彼女のこういうところが、憎めない。
「あたしも驚いたよ。まさか君が……ね」
含みを持って、彼女は笑む。
それには答えず、私は教室に向かう足を眺めた。
そう、私だって変わっている。
この全寮制の女子校において、ただ一人だけ。
私は、男だった。
終わりや終わり! 終了!!
書いた人: 久世うりう (kuzeuriu) お問い合わせ